建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2002年5月号〉

interview

林業・観光産業を一体化させたマチづくりへ

「いこいの森」を中心に地域を活性化

北海道丸瀬布町長 枝松 泰彦 氏

枝松 泰彦 えだまつ・やすひこ
昭和 17年 11月4日生(満59歳)
最終学歴 東京農業大学中退
昭和 44年 4月 1日 丸瀬布町役場
平成 2年 10月 20日 丸瀬布町総務課長
平成 5年 4月 1日 丸瀬布町財政課長
平成 6年 6月 6日 丸瀬布町長1期
平成 10年 6月 6日 丸瀬布町長2期
丸瀬布町は、北海道網走支庁管内のほぼ中央に位置し、四方が山に囲まれ、総面積の約95%が山林原野で占められた緑豊かなマチだ。その恵まれた自然環境を生かし、活力ある産業と福祉の充実を目指す、枝松泰彦町長に丸瀬布町の特徴を生かしたマチづくりについて語ってもらった。
──まもなく町長の任期も2期目を終えようとしています。その間、“下水道町長”と呼ばれるほど、下水道整備を精力的に進めてきましたね
枝松
下水道だけに力を入れてきたわけではありませんが(苦笑)、昨年度から管渠工事に入り、供用開始は平成17年度の予定です。お陰様で下水道整備は随分進んできましたね。
もちろん下水道だけではなく、就任の翌年には、10年間を計画期間とする「第二期丸瀬布町総合計画」をまとめ、その実施計画(5ヶ年計画)の中に様々な公約を盛り込み、町政を進めてきました。例えば、現在進行中ですが、商工業の活性化策として駅前再整備に取り組んでいるほか、高齢者対策、福祉対策、少子化対策を中心に様々な政策を遂行し、公約については概ね進められていると思っています。
──丸瀬布町は林業のまちでもありますね
枝松
町の林野面積の96%は国有林です。国の営林署は廃止されましたが、森林事務所は残ったので、国有林の整備は国が主体となって進めています。国有林以外の町有林、民有林は2,000haに満たないですが、特に民有林については、自己負担が5%になるくらいにまで、国、道の補助に町が上乗せして整備を進めています。 
林産業は、町には、林産協同組合の敷地内にヤマハの専属工場があり、これを介して様々な助成も行っています。町では、既存の条例で林産業に対する助成策を行っていますが、これとは別に林産業に対する助成条例を施行しています。厳しい状況ですが、林業・林産業が存続していけるような対策を講じていかなければなりません。
――そのためには、木材や自然を活用した観光産業の育成も必要ですね
枝松
観光面では、「いこいの森」、「山彦の滝」、それから「藤」を整備している「平和山公園」がありますが、ここに隣接した国有林を100ha程購入し、それを保存しながら、観光資源として遊歩道を整備しています。こうした資源を活用しながら、観光に携わる人材の育成も進めようと準備しており、これは何とか成功させていきたいですね。
──徐々にその成果は現れてきているようですね
枝松
特に、「昆虫生態館」や日帰りの温泉「やまびこ」を整備したことに伴う効果は大きかったですね。観光面では、高規格道路(旭川紋別自動車道)が整備されますから、大きいものでなくても、少しでも光る施策を行っていかなければならないと思っています。
その一つが、「いこいの森」です。ここには、本物の森林鉄道で使用したSLが走りますが、ここを中心にキャンプ場の整備を進め、昆虫館や日帰り温泉施設も同一敷地内にまとめました。それから、民間ホテル「マウレ山荘」が町に立地されましたので、今後の観光振興にはずみがつきます。
――未整備の地域では、新幹線の誘致に全力を挙げています。実際、各地とも整備による経済効果を様々な希望的観測に基づいて試算しています
枝松
新幹線の最大のメリットは、移動時間の短縮です。また、踏切がないために事故が皆無であることです。昭和39年に東海道新幹線が開業して以来、新幹線の列車走行に伴って旅客が死亡した事故は、過去に1件しかありません。三島駅で、発車間際に飛び乗ってドアーに引きずられた事故です。その他にも、飛び込み自殺や、保線要員の事故はありますが、脱線や踏切などが原因となる死亡事故は皆無です。それほど新幹線は安全性が高いのです。
それからスピードが非常に速く、定時性・安定性が高いことも重要なメリットです。東海道新幹線の関ヶ原付近で雪に弱いところがありますが、東北・上越を含めて新幹線は雪対策ができていますから、降雪によって運行が止まることもありません。車内のスペースも、旅客機に比べると余裕があり、快適ですね。
また、鉄道の駅は街の中にできますから、遠隔地にある空港まで出向く必要がありません。思い立ったらすぐに乗れます。旅客が多ければ多いほど頻繁に列車を運行できますから、新幹線ができると旅客が増え、増えると当然のことながら旅客自体の行動範囲が広がります。企業や工場の進出、駅前の開発など、かなり幅の広い範囲で地域の開発が行われることにもなります。
一方で、今までより便利になりますから、「ストロー現象」も見られるでしょう。これまでは、東京から離れていたがゆえに支店を置かなければならなかった企業も、日帰り出張圏内になったお陰で、支店を配置したり、維持する必要がなくなるところも出てきます。その意味では、経済はさらに東京に吸収される面もでてきます。ショッピングにしても、これまでは地元で済ませていたのが、短時間で東京に行けるようになるので、足を伸ばす可能性も高くなります。
何れにしても、地域間の交流が盛んになることは、長い目で見れば経済を活性化し、地域全体を盛り上げていくことに繋がっていくのではないでしょうか。
──少子・高齢化に伴う福祉対策については
枝松
町では、いち早く福祉対策に取り組み、昭和50年に養護老人ホーム、60年に特別養護老人ホームが完成しました。この管内ではかなり早いほうでしたね。そのため、老朽化が進行しており、近い将来、建て替えが必要です。
また、ソフト面でも、介護保険制度も創設されたので、万全を期すために、介護認定から漏れる人達の対策も進めていかねばなりません。介護保険制度の事業主体である社会福祉協議会の育成を図り、地域の自治会や老人クラブ「寿大学」とも連携。また高齢者対策としては病気に対する予防も重要ですから、医療も含めた三位一体となった支援体制をいかに進めていくかが課題です。
子供達については、就学前までの入院・通院に対する助成、中学生までの全員を対象にした心臓検診を行っています。また、第3子から30万円を与える助成も進めており、7〜8人の利用実績があります。
保育所については、平成13年度から、ゼロ歳児まで対応できるよう、施設を改造しました。
──町村合併への対応が浮上していますね
枝松
現在、丸瀬布町を含む周辺7町村で色々と議論しています。道では2通りの合併パターンを提示していますが、どちらの案で合併をするか、という議論はされておりません。まずは合併に対する情報・認識を7町村で共有化し、それぞれの住民に知らせていくことが必要です。
──最後に、今後の町の重要課題について
枝松
下水道やゴミ、家畜糞尿などの環境対策も、今後、大きな課題となっています。財政が厳しい状況の中、大きい上物を含んだ政策は出しにくい面がありますが、老人ホームなど大型施設の建て替え時期も迫っており、これには相当な予算を要します。ですから、平成14年度からも行政改革を進めていかなければなりませんね。

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