建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2002年4月号〉

interview

環境と福祉をテーマに都市の形成を図る

市民の信頼と評価を得るためには、職員の意識改革を図ることが大切

北海道帯広市長 砂川 敏文 氏

砂川 敏文 すながわ・としふみ
昭和23年1月21日生まれ
香川県大川郡志度町出身
帯広畜産大学草地学科卒業
昭和 45年 4月 農林水産省 農地局 経済課 入省
47年 4月 北海道開発局 人事課
55年 6月 北海道開発庁 予算課専門官
59年 10月     〃    総務課長補佐(大臣秘書官)
61年 6月     〃    予算課長補佐
63年 6月 北海道開発局 帯広開発建設部次長
平成 2年 6月     〃    開発計画課長
3年 6月 北海道開発庁 計画官
4年 6月     〃    考査主幹
6年 11月 北海道開発局 会計課長
8年 7月     〃    官房調整官
9年 10月     〃    官房調整官 退官
10年 4月 帯広市長 当選 就任 (10.4.21〜 )
帯広市は、広大な十勝平野をバックに緑豊かな大地が広がり、北海道らしい自然と風土があふれるマチだ。市では、環境管理に関する国際標準規格である「ISO14001」を取得したほか、さらに品質管理の「ISO9001」の取得に全力をあげている。「環境対策と福祉対策が私のテーマ」と語る帯広市長・砂川敏文氏に帯広のマチづくりについて伺った。
──北海道開発局を退官して帯広市長となり、いよいよ4年が経過しますね
砂川
4年間は、長いようで短く、あっという間に過ぎたと感じます。やはり国の行政機関と違って市民の生活に密着しており、日々の細かなことや市民生活に直結する全てに対応しなければならないことを痛感しました。市長の職務を体感して感じたことは、やはり市民との信頼関係が最も大切だということで、まずはそれを構築していこうと思いました。
市役所が、本当に市民の為に役立つのだという信頼と評価を得なければなりません。そのためにまず、職員が市民サイドの気持ちを持つ意識改革に取り組みました。
──職員の意識は変わりましたか
砂川
特に若い職員を中心に変化してきたと思います。意識改革の内容は、まず、高齢者福祉など「福祉の心」を会得するために、就任時には全職員を対象に、福祉施設での介護研修を行いました。私自身も研修を受けましたが、今まで高齢者介護は、頭では理解していたつもりですが、実際に作業すると全く違いましたね。体験によって、介護をする人とされる人への認識が変わりました。
また21世紀は、環境の保全が重要視されています。しかし、その意識を職員全員が持っているかというと、必ずしもそうではありません。そこで、昨年の一月に、全職場で環境管理に関する国際標準規格である「ISO14001」の認証を取得しました。これによって市が、環境への負荷を考えることも大事ですが、とりわけ職員の環境に対する意識の変化が、執務状況に現れていることに満足しています。
この次は、品質管理に関する国際標準規格である「ISO9001」の認証取得を目指しています。市役所は、いわばサービス業ですから、提供するサービスの品質管理が重要で、この取得を目指すことにより、職員には市民へのサービス向上の意識を持って欲しいと思います。
──行財政改革はどのように進めていますか
砂川
人員の削減については、1,700名の職員定数のうち、10年間で249名を削減する予定です。これは平成12年から始めており、これまでに削減が確定したのは121名です。方法は、従来の業務を民間委託する方針です。民間委託といっても2通りあり、民間に代行してもらう方法と、まるごと民間の事業として、民間業者に委託する方法です。
──具体的には、どのように委託しましたか
砂川
例えば、身寄りのない高齢者や児童の救護は、今までは市営の救護施設で行っていましたが、今やそうした事例は全国的に見ても少なく、ほとんどは民間法人化の傾向となっていますから、帯広市も同様に民間委譲しました。これによって大幅な人員削減ができました。また、清掃事業や道路維持業務なども市の直営でしたが、これらも民間委託しました。
──その他の行財政改革には、どのように取り組んでいますか
砂川
情報公開制度を確立しました。帯広市の取り組みは、全国的にも早く、昭和60年代に公文書公開条例を制定していました。しかし、時代の流れが速くなり、行政にもさらなる説明責任、アカウンタビリティが求められ、これを確実に行わなければ市民との信頼関係にひびが入ります。
そこで、公文書公開条例を廃止し、12年4月に市民の知る権利の尊重と行政の説明責任を明確にした「帯広市情報公開条例」を新たに制定しました。しかし、これも規定が新しければ良いというものではありません。自発的に公開できるものは公開していく方針です。これによって、市民の市政に対する信頼が確立できると思います。そして市民とのパートナーシップつまり協働によって、市民のパワーを市政に活かして行きたいと思います。
──帯広は、穀倉を中心とする農業生産王国として、全国的に知られていますね
砂川
自然環境に恵まれた帯広・十勝の基幹産業は、やはり農業であり、わが国有数の大規模畑作・酪農地帯として、食料供給基地の役割を担っています。この地域の生産物は、「十勝ブランド」として高く評価され、農産物に「十勝」の名前を付けただけで、売り上げが何倍も伸びる状態です。このように、十勝の生産物は良い食材だという意識が消費者の間で定着しています。
しかしここで、慢心するのではなく、今後も農業の振興を真剣に考え、より足腰を強く堅実にしていく必要があると思います。後継者問題や土づくりなども、環境と共生した形での解決を図りながら、国際競争の厳しい時代を生き残っていきたいですね。
また、十勝は森林王国でもありますから、林業も振興を図っています。公共施設には木材をふんだんに使用しており、例えば、建設中の小学校校舎には、全ての内装に地場産の木材を使用しています。子供たちが使用する机やいすも、主流はパイプですが、これを木に変える計画も進めています。現在では、木材加工業者の協力で試作品も完成し、パイプの机と変わらない価格でありながら、耐久性も充分な物ができました。木は肌触りも良く、ぬくもりがあり使いやすいものですから、今後も木材を多用して林業の活性化を図りたいですね。
──これらの地場産業を支援する行政側の体制づくりは
砂川
市には産業技術センターがありますが、これをさらにレベルアップさせた施設として、地場産業支援センターを計画しており、地元企業の技術力向上、製品開発、市場開拓などを支援していく予定です。
──福祉施策はどう取り組んでいますか
砂川
福祉は、私にとって大きな政策テーマで、あらゆる政策は、環境に対する配慮と福祉の二つの観点を軸に進めています。特に福祉は現在、ユニバーサルデザインに基づくマチづくりを進めています。ユニバーサルデザインとは、誰もが差別や障害を感じることなく暮らすことができる社会をつくることです。物理的な障壁を取り除くことにより、ハンディを持つ人への思いやり、やさしさが生まれ、そのことにより精神的な障壁もなくなっていくものと考えます。
──ユニバーサルデザインは、具体的に実際にどのような形で進めていますか
砂川
例えば、高齢者の中には、住宅の中で転倒して怪我をする人が多いそうです。そこで、高齢者向けあるいは障害者向けのデザインを推奨しています。最近は、民間のハウスメーカーもその意識が高くなり、当初から段差の解消や手摺りをつけたりしています。これこそは、ユニバーサルデザインの現れです。
市でも在宅介護は住宅で行われますから、住宅がそうした仕様でなければできません。そこで、建築士や看護士、介護福祉による専門家のチームを編成し、アドバイザー制度を設けて、ユニバーサルデザインに基づく住宅改築へのアドバイスを行っています。市は、これに対して50万円を限度に補助金を出していますが、応募はかなり多いです。
また市内柏林台地区は、ハード事業が集中していることから、マチ全体をユニバーサルデザインモデル地区と捉えて整備を進めています。現在、公営住宅の建て替えや道路、公園、学校などの整備をユニバーサルデザインに沿って進め、誰もが一緒に居住できる地域にしたいと思っています。
ただし、施設などの環境といったハード面だけ整備しても限界があります。問題は障害者などに対する意識面ですね。
──障害者に対する意識改革も重要ですね
砂川
帯広市は、障害者に対するケアに関しては先進的で、地域の支援が充実しており、障害者の必要なケアを地域内だけで十分に賄うことが基本的な方向性としてあります。また障害者対策の計画作成には、障害者本人に入ってもらうことにより、当事者の意見も反映しています。これもまさにユニバーサルデザインです。誰でも参加できる社会参加の仕組みですね。
また小学校などには、よく障害者のための特殊学級、養護学級がありますが、学級を分けるのではなく、普通学級で一緒に学んで欲しいと考えています。そのため、市内の全小中学校にユニバーサルデザインに基づき、エレベーターや玄関スロープ、障害者トイレを整備しました。
これは、障害者だけでなく健常者にとっても良い面があります。障害者は、社会参加できるようになる一方、健常者にとっては、今まで接し方が分からず、例えばマチの中で障害者が困っていても戸惑うばかりでしたが、子供の頃から障害を持った人に接していれば対処できるようになります。この接し方を会得しているかどうか、またその気持ちが持てるかどうかは、ソフト面でかなりカバーできると思います。大人になってから教えたのでは遅いわけで、子供のうちから学校生活の中で自然に学んでもらわなければなりません。
──懸案となっていた市立病院と図書館の整備状況は
砂川
市立病院は、将来の医療環境などを見据えながら、療養環境の向上のために、建設、収支計画等の作業を行い、関係機関との協議を進めています。また、医師がいなければ話になりませんから、何としても確保しなければなりません。
そのため現在、支援してくれる大学病院を懸命に探している状況で、これからも精力的に取り組みたいと考えています。
図書館は、既存の施設がかなり老朽化・狭隘化しており、ユニバーサルデザインに即していません。これまで、改築という考えのもと、基本構想、基本計画を進めてきましたが、建築場所については一層の議論が必要との考えから、議会での論議を経て、現在、教育委員会の考え方を整理していただいているところです。一刻も早く、早期着工、早期供用開始に向けて、市民の期待に応えられる図書館建設を目指したいと思います。
──財源の確保は
砂川
現在の地方自治体の財政状況は、国の財政難を反映して地方交付税の配分も厳しいものがあります。しかも不景気ですから、地方税の自主財源も厳しくなっています。このため、財政状況は厳しい状態です。にも関わらず、地方分権が進み、地域の特性を活かして自主・自律しなければなりません。この問題をクリアするためにも、まず財源確保が重要となります。当然、国から地方への権限委譲に見合った税財源の適正配分は不可欠ですが、これが実現しなければ、格差が生じる地域もあるでしょう。
我々としては、厳しい状況の中にはあっても、できるだけ行政サービスの水準は落としたくないのです。ですから色々な道を模索していかなければなりませんね。
──一つの道として、市町村合併も提唱されています
砂川
合併問題については判断が難しいです。市町村合併をしたから全てが上手くいくという保証は無いし、逆に合併しなかったら上手くいかないというわけでもないと思います。合併以外にも、色々と道があるのではないかと思います。
現在、道が示しているモデルでは、帯広は1市3町と1市2村のパターンがありますが、必ずしもこれに拘る必要はなく、これを含めて、十勝の市町村をどの方向に持っていくのか、議論をして、充分に検討していかなければなりませんね。
──今後の市政運営に向けての抱負は
砂川
やはり、環境に対する配慮と、福祉におけるユニバーサルデザインの推進に尽きます。これらに気配りし、「人にやさしいマチづくり」を進めて、誰ひとりとして不自由な暮らしを強いられないように、細かいところまで心をくばっていきます。これからも帯広市民の笑顔が、もっとあふれるマチにするために、より一層の努力をしていきたいと思います。

HOME