建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2002年4月号〉

interview

先進的なIT化の取り組みで、総務大臣表彰を受賞

懸案事業である市立病院は、平成17年度完成を目指す

北海道深川市長 河野 順吉 氏

河野 順吉 かわの・じゅんきち
生年月日:昭和13年3月30日(満63歳)
最終学歴:北海道立深川農業高等学校卒業
<現在の主な役職>
  深川市長(平成6年10月から現在2期目)
  北海道市長会監事
  北海道高速道路建設促進期成会副会長(会長知事)
  道央圏地域整備展開構想推進協議会会長
  (財)北海道地域活動振興協会理事長
<過去の主な役職>
  深川市議会議員(連続7期当選)
  北海道社会教育委員
  深川市議会副議長
<賞>
  北海道社会貢献賞受賞(昭和51年2月17日)
  北海道産業貢献賞受賞(昭和57年7月1日)

大雪山連峰を源とする石狩川や雨竜川の流域に田園地帯が広がる深川市。基幹産業の農業は厳しさを増しているが、ライスランド構想やマルチメディアへの取り組みによって、新たな深川市の将来像が見えはじめている。「市民と行政が一体となり、豊かさが感じられる深川」を目指す、河野市長に深川のまちづくりについて伺った。
──市長として8年間を、どう自己評価していますか
河野
平成6年10月の市長就任以来、「市民の皆さんと共に語り、共に考え、共に行動する」ことを基本理念として、今日まで務めてきました。
この間、極めて厳しい社会経済情勢の中にあって、市議会、関係機関・団体をはじめ市民の皆さんから、心温まるご支援をいただきながら、より幸せが実感できる「ふるさとふかがわ」を目指して、私が公約した政策の実現に日夜努力を重ねてきました。その多くを軌道に乗せて、着実な歩みができたのも皆さんのおかげだと思います。
──平成14年度より、第四次深川市総合計画がスタートしますね
河野
地方分権一括法の施行に伴い、地方公共団体は自らの判断と責任のもと、個性あるマチづくりを進めなければなりませんが、地方財政は国と同様に厳しい状況にあります。特に深川市は、農業が基幹産業ですが、北海道の食糧基地として、農産物に付加価値を付ける取り組みなど、地域に根ざした新たな産業起こしが重要です。
地域の活性化を図りながら、私はやはり市民の皆さんに、安全で安心できる豊かさを感じていただきたいと思います。
21世紀を迎え、少子高齢化・国際化・情報化、また、物の豊かさから心の豊かさへの価値観の変化など大きな時代の転換期にあって、新しい時代に対応した計画的なまちづくりを推進しなければなりません。新たな総合計画の策定では、10人の公募委員を含む45人のまちづくり市民協議会委員による協議を重ね、また市民アンケート調査も実施し、市民の意見を多く取り入れながら策定しました。
第四次総合計画での10年間の深川の都市像は、「市民とともに創る・住みよいまち・深川」。これは、市民と行政が一体となってまちづくりを進める基本的姿と、人と人とのふれあいや自然を大切にして、住んでよかったと思えるまち、ふるさと深川に誇りが持てるまちづくりを進めていくことを表現しています。
いよいよ今年からスタートしますが、市民とともに、総合的かつ計画的な行政運営を行い、住みよいまち深川の実現に向けて着実に推進したいと思います。
──市立総合病院の現状と改築に向けての状況は
河野
市立総合病院は、昭和44年に改築以来32年を経過し、高齢化の進行、疾病構造の変化などにより、1日平均の外来患者数は年々増加し、平成12年度では約1,000人を数え、入院患者も300のベット数がほぼ満床の状況となっています。心配された累積赤字も病院関係者の努力で年々解消が図られています。
これまで、利用者に適切な医療サービスを提供するために、内部の改修や最新の医療機器導入などの取り組みを進めてきましたが、近年、施設の老朽化、狭あい化が著しく、医療の近代化、高度化、多様化する患者ニーズに対応するためには、ソフト・ハード両面の病院整備が必要であり、また病院を利用している方々からも、早期改築が強く求められていることから、全面改築することになりました。
──新病院の立地条件は
河野
現在の市立総合病院は、市街地のほぼ中央に位置し、バスなどの交通機関の利便性も良く、恵まれた場所にあります。病院建設は、多額の財源を要し、しかも今後のまちづくりにも大きな影響を与える大事業であると同時に、市民の生命や健康に直接係わる問題であることから、市街地の形成や商業振興、人の流れ、周辺地域からの利便性などの観点から慎重な調査検討の結果、隣接地を含む現在地で改築することにしました。
やはり、長い歴史のある現在の総合病院に通った方々にとっては、通い慣れた今の場所が最も最適でしょう。また、改善が求められていた駐車場も、今までの90台から350台へと拡充します。改築工事は、今年秋の着工を目指し、完成は平成17年度末を予定しています。
新病院は、地域住民に信頼される医療の提供と、健康保持増進に適切に対応することなどを基本理念とします。そのためには、医療水準を高めるための医療機器の導入は、決して惜しまない考えです。また、これからの病院は、高度な医学治療の必要性は勿論のこと、治療効果を最大限に発揮できる療養環境の整備も大切なことです。
特に、設計理念においては、安らぎ・明るさ・ふれあい・思いやりの4つのキーワードの空間が、病院機能に必要な自然治癒力増進につながると考え、そこを「癒しの環境」として捉え、「治癒環境」を創出する計画にしています。
深川市立総合病院が、医療施設として居住性・機能性・安全性・経済性の調和をモチーフとしながら、地域に愛され、親しまれ、患者や地域住民に喜ばれる21世紀を展望したものにしたいですね。
──基幹産業である農業については
河野
農業を取り巻く環境は、昨年9月に発生した国内初の牛海綿状脳症(bse)や急増する農畜産物の輸入に伴い国内農畜産物価格は低迷し、加えて景気停滞などにより厳しい状況に直面しています。
また、一番の大きな痛手は、1月22日の突風ですね。最大風速51.9m/秒という、かつて経験の無い暴風雨が深川を襲い、電柱が25本も折れ、ビニールハウスなど農業施設に大きな被害がでました。この影響で、春先の農作業に支障が出ないか心配しております。現在、対応策を検討中ですが、厳しい中でこそ、先人の方々が誇ってきた、石狩川が流れる肥沃な土地でできる米や野菜に、生産者自らが誇りを持って欲しいと思います。
私は農業支援策として「ゆとりある農業経営」の実現を目指し、稲作を中心に「売れる農産物の安定的生産」に努め、特に稲作は、良質・良食味米主産地としての地位確立を目指し、また経営の多角化の推進も図ります。
また、ライスランド構想の中では、道の駅「いざないの里」があります。これは道の駅をメーンにした農作物の情報発信基地です。今年中に建設し、来年供用開始予定ですが、深川の農作物の発信状況が一目で解るように、環境に優しい肥沃な土地で栽培してできたお米や農作物であることを情報発信できる態勢にして、情報化の時代に合わせた取り組みをしていきたいですね。
──深川はどの地域からもアクセスが良いので、観光に適しているのでは
河野
深川市は交通の要衝にあり、高速道路のほか、JRを利用する場合などは旭川市から約20分、札幌市から約1時間という近さにあります。また、留萌市につながる高規格道路なども建設中であり、開通後は主要産業道路として期待されています。
近年、集客力のある大型施設を整備したことから、観光入込客数は増加傾向にあります。音江山麓周辺には北海道で唯一の道立青年の家をはじめ、アグリ工房まあぶ、まあぶオートキャンプ場、深川スキー場、ぬくもりの里の「ほっと館ふぁーむ」、りんごやサクランボなどの観光農園を整備してきました。また、街中に目を移すと、JR深川駅横の経済センター・アートホール東洲館や温水プール「ア・エール」などもオープンしました。
都市と農村の交流センター「アグリエ房まあぶ」では、温泉と農産品の加工体験を中心に、交流人口が増えています。また、スポーツ宣言都市の深川では、合宿のまちとして第3種公認全天候型の陸上競技場と夏場のトレーニングに適した林間コースもあることから、箱根駅伝に出場した大東文化大学をはじめとする多くの大学や実業団チームの合宿地として利用いただいています。これからも陸上の合宿場として、全国にPRしていきたいですね。
今後は、豊かな大自然の良さを深川だけの狭い範囲でPRするのではなく、北空知の広域圏という立場で、そば生産全国一の幌加内町、美しいひまわりの里の北竜町、ローズガーデンのバラが素晴らしい秩父別町など、北空知のお互いの良さを組み合わせながら、深川の良さもPRしていきたいと思います。
──情報通信技術(IT)の地域づくりも進められていますね
河野
平成11年度マルチメディアセンターを開設して、インターネット無料接続サービスなど地域の情報化を推進するとともに、市役所と公共施設を通信回線で結び、行政情報をイントラネットで提供してきたことなどが認められ、深川市は地域づくり大臣表彰の「優良情報化団体」に選ばれ、1月に東京で総務大臣表彰を受けました。マルチメディアのまちづくりを標榜している本市にとって、大変名誉なことであり、市民をはじめ職員の皆さんに感謝したいと思います。
今後も住民サービスの向上や行政の効率化を図る手段として、情報化の推進を図りたいと思います。
──現在、論議されている市町村合併問題については、どう考えますか
河野
北空知の広さは、香川県に匹敵します。消防、水道、衛生行政など、色々な場面で近隣市町と連携していますが、合併については、深川市を含め近隣町においても、協議していただきたいと思います。
先般、道の西山地域振興室長を招き、合併問題について勉強会を行いましたが、まず職員自らも、合併について勉強しなければなりません。合併は、充分に勉強してからで良いのです。この一年については、職員も市民も合併について研究していただきたいと思います。凧揚げのように時代の風に逆らうのではなく、時代の風を利用していくべきですね。
──今後の政策展望や抱負など
河野
第四次深川市総合計画のスタートの年となる14年度においては、市立総合病院・新市民会館の改築、ゴミ処分場の建設、ライスランド構想いざないの里「道の駅」整備、納内コミュニティセンター改築着手などの大型事業も多く、市民の皆さんに夢をもっていただけるよう努力したいと思います。
私は自らを深川のセールスマンだと思っています。職員にいつも語るのは、チームワークとネットワークと、そしてフットワークで、自分の足で仕事を進めなければならないと話しています。70数項目にわたる行政についての出前講座を実施しており、団体等から依頼があると、担当者が説明に出向きます。職員も知識がなければ、市民の前で恥をかくことになりますから職員自ら勉強しなければなりません。
私のスタンスとしては、これが人づくりなのです。人をつくっていかなければ何事もできないと思いますね。子供達の立場から、教育の立場、そして生涯学習へと。家庭が大事であり、家庭の次には地域の町内会へとつなげていきたいですね。
先人から引き継がれた深川市の貴重な財産を生かしながら第四次総合計画に掲げる「市民とともに創る住みよいまち深川」の都市像の実現に向けて、市民と行政が一体となって着実に歩めるよう、全力傾注する覚悟です。

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