建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2002年3月号〉

interview

【北海道新幹線特集】

新函館駅を道南圏発展の核に

北海道新幹線への期待―沿線自治体の首長に聞く

北海道大野町長 吉田 幸二
──鉄建公団の工事実施計画の認可申請により、北海道新幹線実現への道筋が整ったと言えますが
吉田
これまで、新幹線が通ると言われ続けながらも、いつまで経っても方向が見えませんでした。町民の間には、このことに対する政治への不信感が少なからずあったのです。今回の申請により政治に対する信頼が取り戻され、嬉しい限りです。
──大野町のこれまでの誘致への取り組みは
吉田
昭和63年の青函トンネル開業と同時に「大野町北海道新幹線建設促進期成会」を発足しました。町では、講演会やフォーラムの開催、先進地の行政視察などを行い、町民、そして新幹線対策特別委員会を設置した議会とも力を合わせ、誘致運動に取り組んできています。
平成11年度より13年度まで、「北海道新幹線(仮称)新函館駅周辺整備計画」を策定し、道の協力を得て、新年度からまちづくりの基本調査を進める予定です。
──大野町は農業のまちですが、農業と新幹線をどのような形でまちづくりに活かしていこうと考えていますか
吉田
新幹線によってまちづくりの方向性を見失ってはなりません。夢ばかりを追わず、現実を見据えたい。新幹線が来る、来ないに関わらず、大野町のまちづくりの第一の柱は農業。今進めているのは「緑の森づくり」です。1,200haの町有地に植林を3年間続けていますが、これは100年先を見越した計画です。
また、4つの小学校区に市街化区域を設け、その間に農地がある空間を作っています。まず環境を大切にしたまちづくりを進め、新幹線を迎え入れたいと思います。
──大野町に新函館駅ができれば、町の経済的な発展が大いに期待されますか
吉田
平成44年までの新函館駅周辺地区の開発整備に要する工事費は499億円。これに対し、新幹線開業から平成44年までの20年間における産業などへの波及効果は2兆1,409億円と試算され、地区開発工事費の42倍の経済効果が、期待されています。
しかし、自分のまちだけが良くなれば良いと考える時代は終わりました。新函館駅は、大野町だけではなく、道南全体が発展するための駅になっていただきたい。近隣町村とも話し合いながら、駅を育てていかなければならないと思います。
──着工に当たっての財源問題は残された大きな課題の一つでは
吉田
わずかずつではありますが、町でも平成12年度から積立を始めました。これまでは1,000万円ずつでしたが、もう少し高額な金額を積み立て、準備をしていきたい。ただ、大野町も交付税を7割受けており、国や道の協力も必要です。
基本となる道路整備も重要です。新幹線開業に合わせ、北海道縦貫道路や函館新道などの道路網が整備されれば、新函館駅周辺は鉄道網と道路網による広域的な高速交通体系が確立されます。大野は、北海道各地域や道南各都市を結ぶ広域交通拠点となるでしょう。

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