建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2002年3月号〉

interview

北海道新幹線実現に新たな一歩

570万道民の夢と希望を乗せて

北海道総合企画部長 相馬 秋夫 氏

相馬 秋夫 そうま・あきお
生年月日 昭和19年2月18日
出身地 北海道帯広市
最終学歴 北海道大学法学部(昭和41年3月卒)
昭和 41年 4月 北海道職員採用
昭和 62年 6月 総務部人事課長補佐
平成 元年 4月 空知支庁地方部長
平成 3年 5月 総務部知事室参事
平成 5年 4月  〃 人事課長
平成 7年 6月  〃 次長
平成 9年 6月  〃 職員監
平成 11年 5月 網走支庁長
平成 12年 4月 建設部長
平成 13年 4月 総合企画部長
北海道新幹線の開通は、道民の長年の夢だが、計画の実現性については、何度も浮沈を繰り返してきた。しかし、地道でねばり強い北海道からの働きかけが功を奏し、わずかずつながらも実現に向けて着実な前進を見せている。570万道民の夢と希望を乗せて走る新幹線の、誘致に向けて全力を挙げる北海道総合企画部の相馬秋夫部長に、将来への希望と抱負を伺った。
──1月8日に環境影響評価書が送付され、工事実施認可申請が行われましたが、我が国の交通体系上の北海道新幹線の必要性などについて教えて下さい
相馬
1月8日、日本鉄道建設公団において、北海道新幹線新青森札幌間の工事実施計画認可申請が行われました。
昭和48年に、北海道新幹線が整備計画路線として決定し、建設促進の道民運動の展開を始めてから今日まで、長年にわたり関係者の皆様方が一丸となって建設促進に取り組んできた努力の結果が実を結んだものと考えており、新春を迎えてすぐの吉報を受けて、大変よろこんでおります。
北海道新幹線は、我が国の高速交通体系の形成に不可欠な路線であり、国土の2割を占める北海道にとっても、新しい産業の創出などに大いに役立つ基幹的な施設と考えています。
北海道と本州との大幅な時間短縮によって、利便性が増大し、経済・文化の地域間交流が一層促されることとなり、さらには、消費支出の拡大に伴って経済波及効果がもたらされ、二酸化炭素の削減や省エネによって環境保全などにも大きく貢献するものと考えています。
ご承知のとおり、北海道と本州を結ぶ青函トンネルは、巨額の国費と24年の歳月をかけて昭和63年に完成しておりますし、1日も早く新幹線を通したいですね。
──新幹線が北海道にもたらす経済波及効果やメリットについて伺たいのですが
相馬
まず、新幹線建設に伴う経済波及効果についてですが、平成12年に北海道新幹線建設促進期成会がとりまとめた調査によりますと、道内の様々な産業分野に生産を誘発させ、建設費の2倍近い経済波及効果があると予測されております。
また、新幹線開業による経済波及効果についてですが、同年の経済団体が民間のシンクタンクに委託した調査によりますと、新幹線の開業に伴って本道の鉄道利用客は大幅に増大し、その利用客の消費支出によって卸売業、運輸業、農林水産業などで1,400億円強の生産額が誘発されると予測されています。
さらに、新幹線はご承知のとおり航空機の2〜3倍の人員を目的地まで運ぶことができるほか、輸送機関の中で二酸化炭素の排出量が自家用車の8分の1、航空機の5分の1であり、また、エネルギーの消費量もそれぞれ6分の1、4分の1と少なく、環境保全にも大きなメリットがあるとされています。
──開通後を睨んで、道内交通体系はどう整備しますか
相馬
地域間の連携促進や産業の活性化、観光の振興などを図る上で、北海道における交通基盤の果たす役割は、ますます増大してきています。
その中にあって、道外との航空・航路網や道内地域間の幹線道路網の充実が図られていますが、道外との多様な交通手段の確保など一層の取り組み強化が必要となっています。
新幹線という新しい交通手段の導入に伴って、道内高速鉄道網や航空網とのネットワークをどのように図っていくのかなど、今後の道内交通体系の整備については、専門家や関係機関などの意見を聞きながら推進していかなければならないと考えています。
──建設費や開通後の維持費を含めた財源に関する対策は
相馬
新幹線の建設費は、全国新幹線鉄道整備法において、国が3分の2、都道府県等が3分の1を負担することが定められており、また、この法律で、地方公共団体の負担に要する財源について、国において必要な措置を講ずることも定められていますが、新幹線の建設費は多額になりますので、地方公共団体の財政運営に支障をきたすことのないよう、国や関係地方公共団体と十分相談をしていきたいと考えています。
──並行在来線の経営には難しいものがあると思いますが、解決に向けてどのように進めていくのでしょうか
相馬
ご承知のとおり、並行在来線については、新幹線の開業時に併せてJRから経営分離されることになっています。
新幹線の着工に当たっては、平成12年12月に示された「政府・与党申合せ」において、並行在来線の経営分離について、沿線地方公共団体の同意取り付けが基本条件となっているほか、並行在来線を第三セクターで経営する場合には、その経営見通しについて十分検討するよう求められています。そのため、今後とも、沿線地方公共団体やJR北海道などと並行在来線のあり方について協議を重ね検討していかなければならないと考えています。
──今後の建設促進に向けて、道としてどのように取り組んでいきますか
相馬
北海道新幹線や九州新幹線長崎ルートなどの未着工となっている路線については、平成12年12月に示された「政府・与党申合せ」の中で、東北新幹線盛岡・八戸間及び九州新幹線新八代・西鹿児島間の両区間の完成後に見直すこととされています。盛岡・八戸間が平成14年末、新八代・西鹿児島間が15年末に完成予定となっているので、その見直しにおいて、北海道新幹線の着工認可について方向付けされるよう、北海道議会をはじめ、期成会、経済界、関係市町村などと一致協力して、国などの関係機関に対する要請活動を強化していきたいと考えています。
また、北海道新幹線は、新しい時代を支える大切な社会基盤であり、本年末には、いよいよ隣県の青森県まで延びてくることになりますので、青森県とも連携して、一日も早く北海道新幹線の建設が実現するよう努力していきます。

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