建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2002年3月号〉

interview

【北海道新幹線特集】

木古内に降りてもらえるようなまちづくりを

北海道新幹線への期待―沿線自治体の首長に聞く

北海道木古内町長 大森 伊佐緒 氏
──新幹線に対する町民の関心は
大森
町全体の新幹線に対する意識はまだ低く、時間がかかっている割には着工の時期が見えてこないというのが原因でしょう。ただ今回の鉄建公団の申請は一歩前進です。
──新幹線が木古内町にもたらすメリットは
大森
木古内町は昔から交通の要衝で栄えてきました。それぞれ松前、江差、函館まで1時間で行けます。そこに町が発展した大きな要素があります。
今は車社会になり、すっかり衰退してしまいましたが、新幹線は新たな交通の要として、また青函圏や東北との経済・物流の交流も期待できます。
北海道の場合は、やはり札幌が中心ですが、木古内や江差、松前は道内でも札幌から最も遠い地域。それが新幹線なら札幌まで1時間です。青森なら30分、函館まではわずか12分。こうした利便性が木古内町にとってのメリットと言えます。
──計画では道内最初の新幹線駅が木古内となります
大森
かつて私が就職し、転勤で東京に赴任した時、同僚には北海道の函館出身と答えたものです。木古内と言っても分からないからです。新幹線ができれば、“道内で最初に新幹線が止まる駅・木古内町”の出身だと堂々と言えるようになります。木古内から外に出た人達は誰もが同じ悩みを抱えており、これは精神的な面でのメリットです。
──新幹線開通後の木古内の未来像をどう描きますか
大森
木古内に下車していただけるようなまちづくりを進めていきます。通過駅では意味がない。昭和63年に海峡線が通った当時も、そうしたまちづくりを目指しましたが、結果としてみな木古内を素通りし、函館まで行ってしまいました。木古内には目玉の観光施設はありませんが、道南の他町村とも連携を取り、木古内を道南観光の情報発信基地にしたいと思っています。
──新幹線開通に併せて、江差線の存廃問題が浮上してくると思います
大森
木古内から函館までは貨物列車がかなり走るので、第3セクター化された場合でもJR貨物の利用が期待できます。
しかし、木古内から江差までは利用者も少なく、問題となるでしょう。いずれも、関係者による協議を早期に行う必要があります。
──今後の新幹線誘致の方針等については
大森
在来線の問題一つとっても、「在来線はこうにする、北海道はこうするという具体的な理念もなしに、ただ新幹線が欲しい、欲しいと叫ぶだけではいつまでたっても来ない」と言う声がありますが、一理あると思います。北海道だけではなく、物流という観点からも、また国土の高速交通体系上からも新幹線が重要だということを、道民だけでなく、広く一般国民に知ってもらう必要があります。
例えば、木古内で農産物などを保存する大きな施設を作り、東京で災害があった時にはここからいつでも食料を出荷できるようにするなどです。こうした具体的な主張を、中央に対しても働きかけなければならないでしょう。

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