建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2002年2月号〉

interview

道北地域全体の物流ネットワークとして、留萌港を整備

住民の能力を最大限に活かし、マチを活性化

北海道留萌市長 長沼 憲彦 氏

長沼 憲彦 ながぬま・のりひこ
生年月日 昭和9年12月8日
出身地 福島県河沼郡河東町
昭和 52年 自治大学校第一部修了
昭和 31年 北海道庁入庁
昭和 58年 留萌支庁経済部長
昭和 62年 農務部農政課長
昭和 63年 商工労働観光部企業立地推進室長
平成 元年 北海道農業協同組合中央会副会長(平成11年6月退任)
平成 3年 留萌支庁長
平成 5年 北海道庁退職
平成 5年 (社)北海道家畜改良事業団専務理事
平成 6年 留萌市長 現在2期目
北海道留萌市は、日本海に面した海洋都市で自然環境に恵まれた開放的なマチだ。かつては、ニシン漁によって栄えたが、水産業は低迷の一途で、人口の過疎化も進行している。留萌港のフェリー就航やつくり育てる漁業などで、留萌の新たなマチづくりを進める長沼憲彦氏に、その取り組みについて語ってもらった。
――市長としての8年間を、どう自己評価していますか
長沼
1期目に色々な事業を計画し問題点を整理して、それを2期目に手を付け、現在までほとんど実現できたことは、私自身は、ほぼ満足がいく状態ですね。
――主な施策としては、どのような事業に着手しましたか
長沼
一つは、各市町村で頭を悩ませているゴミ処理の問題です。留萌市は、平成8年にゴミ処理場を建設し、12種類の完全分別収集で進めてきました。また、全道と比較して最も遅れていた下水道整備は、現在普及率が人口比率で約75%になり、これは他市の平均に匹敵するまで進められたと考えます。留萌管内における、下水道後進地域という汚名は返上できたと思います。
――留萌港の長距離フェリーの就航に向けて、かなりの努力が見られますが、展望は
長沼
まだフェリーが就航できるほど港を充分に整備していませんが、平成17年を目標に進めています。平成13年10月にフェリーを試験運航しましたが、これが好評で、良い道筋ができたのではないかと思います。せっかく重要港湾という港を持っていますので、これを活用しない手はないと考えます。今まで、具体的な目標を絞りきれなかった傾向があり、その意味で需要港湾留萌港を活かす道は、道北の物流拠点を目指すべきと考えます。
また、物流問題は船だけの問題ではなく、陸上の道路も整備されて初めて、物流にかかる所要時間やトータルコスト面で相対的に効果が出ます。そのため、深川〜留萌間の高規格道路を整備し、道北地域全体の交通ネットワーク、物流システムの確立を目指しています。
――留萌の基幹産業である農業や水産業の振興にはどう取り組みますか
長沼
農業も水産業も、大変厳しい状況です。特に水産業は3隻あった沖合底引き船も全部廃止になり、今は沿岸漁業のみで、沿岸の資源をどう増やしていくかが課題です。
そこで、ニシンや鮭などの放流事業を行っています。これは、資源管理型の漁業ですね。漁獲量は以前に比べて減ってはいますが、留萌の魚介は非常に品質が良く、おいしいものが取れます。こうした取り組みで特徴のある漁業を作り、水産業を復活させたいと思っています。
農業については、北海道の中でも3指に入る最高の米が取れる他、最近ではかぼちゃの生産も増えており、九州との取引も活発に行われています。米だけではなく、野菜類にも生産の幅を広げて、農業所得を増やしたいですね。
――観光の振興策は
長沼
道北に向かう国道231号線は“オロロンライン”と呼ばれ、天売島にいる“オロロン鳥”から名付けられ、これは留萌の大きな観光資源ですが、最近ではもう一つ、風力発電の風車があります。これが留萌近辺にどんどん建設されてきて、留萌周辺は日本でも最大の風力発電地帯になりました。風力発電は、日本ではまだなじみが薄いかもしれませんが、これを観光資源としても生かしていきたいと思っています。
――高齢者や子供達については
長沼
高齢者対策は福祉政策になりますが、誰にでも同じ対策を講じれば良いわけではありません。元気で経済力のあるお年寄りには、高齢者を守るというより、高齢者が持つ力をどうマチづくりに生かしていくか、真剣に考えていく必要がありますね。
子供達には、人間としての心を自分で形づくっていくための手がかりとして、読書を取り入れています。市では、新しく子供が生まれた場合、「ブックスタート」として絵本をプレゼントし、親子で本に親しんでもらうようにしています。この他、図書館での乳幼児の読み聞かせ、小学校での図書館運動など、読書を青少年教育の柱にしていきたいですね。
――留萌の過疎化対策は
長沼
これは一地域、一地方にとっては手の施しようがない問題です。留萌の人口は、毎年300人くらいずつ減っており、昭和42年には4万2千人の人口でしたが、今はもう2万9千人を下ってしまいました。留萌には大学が無いので、進学する子供達は必ず留萌を出てしまうし、就職を希望する子供達の受け皿になれるほど大きな企業もありません。留萌は水産加工業が盛んですが、女子労働型の産業で、家族も定着しない。ところが、水産加工業は人手不足で困っているのです。そういう雇用のミスマッチも人口減少の大きな原因になっています。かつては、人口の増加イコールまちの発展と考えられていましたが、これからは、住んでいる人達それぞれが自分の持てる能力を最大限に発揮していくことにより、マチ全体の活性化を図っていかなければなりません。
――今後、最優先で取り組むべき留萌市の課題は
長沼
地方の財政はどこも苦しい状況になっていますが、これからの大きな課題はその財政再建ですね。もう一つはソフト面を中心にした中心市街地活性化対策です。
これについては、市の中心部である十字街再開発を進めており、昨年の9月には、再開発ビルも完成しました。またビル内には、市営の温水プールも整備しました。これを起爆剤にさらなる活性化を図りたいと思います。

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