建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2000年1月号〉

interview

東京港貨物取扱量が日本一に

港湾サービスを飛躍的にレベルアップ

東京都港湾局長 浪越勝海 氏

浪越勝海 なみこし・かつうみ
昭和17年7月9日生まれ、早稲田大学商学部卒。
昭和 43年 4月 東京都入都(大田区)
49年 12月 総務局人事部職員課主査
56年 7月 板橋高等職業訓練校庶務課長
58年 6月 総務局副主幹(労務・任用監理担当)
61年 7月 財務局主計部予算第二課長
63年 8月 財務局主計部予算第―課長(統括課長)
平成 2年 8月 総務局総務部総務課長
3年 4月 総務局参事(総務局総務部総務課長事務取扱)
3年 6月 生活文化局二ューヨーク事務所長
5年 7月 企画審議室特命担当部長
5年 9月 総務局地域振興担当部長
7年 6月 清掃局作業部長
9年 7月 総務局理事(行政改革推進担当)
11年 6月 港湾局長
東京都港湾局は、東京港の整備・運営、離島の港湾、空港整備、臨海副都心の開発・運営、物流施設としての臨海道路の整備、そして海面の有効利用と言える新海面処分場整備など、その業務は陸海空に及ぶ。東京港は競争力強化のポイントともなる日曜荷役の外貿船に対する港湾使用料の免除や24時間365日体制の確立など、着実にサービスレベルをアップしている。一方、空港は長年の課題だった調布飛行場と大島空港の整備に着手した。経済だけでなく、都民の生活にも大きな影響力を持つ同局の施策について、浪越勝海局長に伺った。
――東京港の取扱貨物量が、順調に増えているとのことですが
浪越
98年の外貿コンテナ貨物取扱量が、横浜港、神戸港を抜いて、念願の日本一になったので喜ばしいことと思っています。
しかし、これは、東南アジア向けのシェアの高かった横浜港が、東南アジアの経済危機の影響で前年比11.6%も取扱量を減らしたのに対し、東京港が5.2%増になったことから一位になれたものです。世界の中の日本という目で見ると、日本の港湾のアジアにおける相対的な地位の低下に歯止めが掛かったということではないだけに、手放しで喜ぶわけにはいかないとも思っています。
東京港が、基幹航路の本船の寄港するメインポートとしての地位を維持していくには、低コスト・高サービスに向けた改革が不可欠となります。
このため、平成9年7月、港運会社・船会社・港湾関係の労働組合・港湾管理者などで構成する東京港振興促進協議会を発足し、様々な議論を経て、平成10年9月には「全体のまとめ」を発表しました。続いて平成11年4月には「アクションプラン」を発表し、使いやすい港づくりのために、関係者がそれぞれ何を行うかを取りまとめたところです。
――一方、他国港との競争力強化も課題になっていますね
浪越
近年、経済のボーダレス化が進み、世界を相手に競争しなければならない時代に入っています。東京港を国際競争力のある使いやすい港にしていくためには、港湾施設の高規格化といったハード面はもとより、ソフト面においても国際基準に適合した港湾サービスの実現や、トータルコストの削減に取り組まなければなりません。
具体的な取り組みとしては、昨年4月から、労使のご努力により土曜夜間荷役作業の条件が撤廃されましたので、積み卸し作業のスピードアップと、それによるコスト削減が可能になっています。
次に、本年7月からは、日曜荷役作業を実施した外航コンテナ船に係る入港料・岸壁使用料を免除することにしました。これは、東京港の24時間365日フルオープンの契機となるよう、都として日曜荷役の恒常的な実施を促し、使いやすい東京港を推進していくという強い意思表明として実施したものです。
また、港湾施設の利用に係るいろいろな行政手続きの簡素化に向け、すでに入港船舶届のファックスによる申請の受け付けを行ってきたところですが、10月12日より港湾ediシステムの運用が開始されましたので、電子情報、例えばパソコンとインターネットを使用するなどの方法により、入港船舶届や係留設備使用許可申請が可能となりました。さらに、システムを整備し、国の関係機関などとも連携して、将来的には行政手続きのワンストップ化ができればと考えています。
そのほかにも、アクションプランには様々なアイデアが盛り込まれています。港湾管理者として、率先して順次これを具体化するとともに、民間事業者の手によるものについても積極的支援・調整し、実現に努めていく所存です。
なお、横浜港など他港との関係については、国内では良きライバルではありますが、日本全体として厳しい国際競争にどう打ち勝っていくかを考えると、将来的には、何らかの役割分担、棲み分けということを視野に入れて協力関係を打ち立てる必要があると思います。
――そうしたサービス向上の基盤となる港湾施設の整備状況は
浪越
局としては、第六次改定港湾計画や、これらの改革案に基づき、港湾施設の整備を進めていますが、急増するコンテナ貨物に対応するための高規格コンテナターミナルの整備が急務で、現在、東京港の主力ふ頭である大井コンテナふ頭の大型化再整備工事を順調に進めており、既に3バースについては供用を開始しています。この再整備は、平成15年度に完成の予定ですが、完成の暁には、バース数は8から7に減るものの、バース長は330〜350mへと延長され、水深も15mへと増深されて、コンテナ船の大型化にも十分、対応が可能となります。
さらに、青海地区で公共コンテナふ頭を整備しているほか、新海面処分場地区での高規格バースの整備計画があります。また、青海ふ頭にバンプールや車両待機場を整備したのをはじめ、大井・品川ふ頭においても背後施没の整備などを行うことで、より使いやすい東京港をめざしていきたいと考えています。
――一方、調布離着陸場と大島空港の拡張整備もようやく始まりましたね
浪越
調布離着陸場は、米軍からの返還後、場外離着陸場として運用されてきており、面積が64ha、滑走路が800mです。4官庁と24企業が使用しており、路線は昭和53年から新島空港と一日3便、59年から大島空港と一日1便、平成4年から神津島空港に一日3便となっています。現在、コミュータ空港としての整備工事を進めており、h12年度末の供用を目指しています。
大島空港は、調布の他に羽田、新島空港と航路で結ばれています。今後の需要予測では、どの路線とも3年後には1.5倍以上に増加する見込みです。また、リタイヤするys11型機の後継機には、b737型機が予定されており、大型化・ジェット化を図っています。そのため計画では、30haの面積を63haに拡大し、1,200m滑走路を1,800mに拡張する予定です。
――東京港沖に整備されている新海面処分場は、都民のゴミ箱として重要な施設ですね
浪越
廃棄物などの最終処分場の確保は、東京の都市活動を健全に維持していく上で、重要な課題です。港湾局では、23区内の廃棄物を今後も適正に処理していくため、新たな最終処分場として平成8年8月から新海面処分場の整備に着手しました。
計画では、総面積約480ha、1億2,000万Fの廃棄物などを埋立処分することができます。
護岸建設は、廃棄物などの埋立処分計画にあわせて、全体をaからgまでの7つのブロックに分け、段階的に整備をすすめています。現在、a、bの2ブロックは供用を開始しており、平成12年度にcブロックの完成をめざして工事を進めています。
また、昨年6月には廃棄物処分場の遮水性について国の定める命令が、従前より具体的な内容に改正されました。これを踏まえ、海域の環境保全に万全を期すため、遮水機能の強化工事もあわせて行っています。
――都内の渋滞状況を考えると、臨海道路のようなバイパスの完成が待ち遠しいですね
浪越
現在、整備中の東京港臨海道路は、港湾物流機能の沖合展開や臨海副都心の開発に伴う交通需要の増加に対処するために、内港地区及び沖合埋立地相互を結ぶ道路として計画されました。
平成5年7月から、第1工区、城南島から中央防波堤地区までの約3.4qの工事に着手していますが、この区間は、第1航路を横断すること、羽田空港に近接した高度制限区域内であることから、橋梁形式での横断ができないため、沈埋工法による海底トンネルとして建設することにしたものです。
海底トンネル部は、1函の長さが120m、幅32m、高さ10mの巨大なコンクリート製の沈埋函11函を海底で連結することにより、延長約1,300mのトンネルを建設するものです。現在、沈埋函すべての制作を終え、本年3月より船で曳航して海底への沈設工事を行っており、城南島側6函の沈設を完了しました。引き続き、中央防波堤側の5函の沈設を行い、平成13年度の第1工区完成をめざしていきます。
――臨海副都心開発の今後の展望は
浪越
現下の厳しい経済情勢のもとにありながら、パレットタウンや、三つ目のホテルが開業し、また、進出事業者の施設建築の工事も順調に進んでいます。
また、政府の手により、国際研究交流大学村の建設が決まりました。この地に各国の叡知を結集することで、大きな夢を描くことが可能になるのではないかと期待しているところです。
さらに、医療施設についても、有明の丘に(財)癌研究会の進出が決定しました。懸案の第二次公募についても、昨年度に第一回目の公募を実施したところ、五件の応募をいただき、二件の進出事業者を決定しています。
一方、石原知事は、新しい1000年紀を祝して1999年大晦日のカウントダウンを提案したり、カジノなどの遊技場の誘致などユニークな提案をしています。
厳しい経済社会状況下にあって、今後も進出事業者を確保して開発を推進していくことは、困難を伴うことと思いますが、臨海開発に不可欠な交通アクセス、広域幹線道路や臨海新交通ゆりかもめ、そして臨海高速鉄道の整備などを予定通りに押し進め、着実に臨海副都心を開発していくことが必要です。

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