建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2000年1月号〉

interview

パートナーシップ型まちづくりを推進

平成12年度から新5年計画スタート

札幌市都市局長 本間博昭氏

本間 博昭 ほんま・ひろあき
昭和17年生まれ
昭和39年芝浦工業大建築学科卒。
昭和 39年 4月 札幌市入庁
平成 2年 4月 建築局住宅部住宅課長
5年 4月 建築局建築部建築計画課長
6年 4月 建築局建築指導部建築相談担当部長
7年 6月 建築局建築部参事
9年 4月 建築局建築部長
10年 4月 都市局建築部長
11年 6月 現職
11年6月の人事異動で札幌市都市局長に就任した本間博昭氏。建築畑を歩んできた同氏に道都・札幌市の都市計画や建築事業から見た将来像を聞いた。
――都市局がスタートして1年半以上経ちましたが
本間
都市局は面整備を受け持つ都市整備局と、建築・住宅を受け持つ建築局が一体となってまちづくりを総合的に担う局として発足したものです。執行体制については、市民のニーズや社会情勢の変化にあわせて、機能的になるよう今後とも見直しを図っていきたいと考えております。
――まちづくりの理念についてお聞かせ下さい
本間
時代の変化はありますが、札幌は世界の都市の一員として、さらには北海道の発展の中心としての役割を強めています。したがって、市民一人ひとりが生きいきと暮らせる生活都市として施設の充実を図っていくことです。
いわゆる“まちづくり”という点では、札幌が成長から成熟化の方向に向かわなければならない時期に来ていますし、さらには、環境への負荷や社会的な費用の低減などの今日的な課題に直面しています。
したがって、札幌の持つ様々な資源、既存の市街地や都市基盤施設を再生、活用しながらきめ細かな取り組みを重ねていくことが重要となります。
――現在、札幌市では大型建築の整備が進んでいますね
本間
サッカー2002年ワールドカップ大会の会場となる札幌ドーム(愛称 hiroba)は、平成13年6月のオープンを目指して本体工事が本格化してきており、12年4月には大倉山ジャンプ競技場がリニューアルオープンを迎えます。
また、本市の台所である中央卸売市場再整備の一環としての「立体駐車場」や「仮称生涯学習センター等複合公共施設」の建設を進めています。
さらには、自治省のリーディングプロジェクトである「東さっぽろ地区コンベンションセンター等公共施設」についても、実施設計に着手しました。

リニューアルオープンする大倉山ジャンプ競技場
――公共建築を進める上で留意していることは
本間
高齢者・障害者のみならず、誰もが安心して過ごせる社会を目指すユニバーサルデザインの検討や、地球温暖化にかかわる対策、計画的な保全の推進、公共建築物ストックの有効利用、事後評価の推進、都市景観や周辺環境への配慮など広範囲にわたっています。
特に、厳しい財政状況でありながら、建て替えや改修時期をむかえる公共建築物が増大してきており、保全計画の策定が急がれていますが、これらの課題に着実に取組み、市民が安心して利用できる、より質の高い公共建築の整備に向け努力しています。
――将来の計画について伺いたいのですが、12年度からは新5年計画がスタートしますね
本間
そうです。5年計画の策定にあたっては、平成11年度に策定中の「第4次長期総合計画」で示された街づくりの目標などを踏まえ、都市局としても独自に5つの課題を設定して、各部での検討を進めたところです。
1つ目は「魅力ある都市空間の形成」という課題です。新しい長期総合計画では、都市機能配置の枠組みとして、都心、東札幌など8つの高次都市機能拠点、厚別副都心、手稲、麻生・新琴似を広域交流拠点として、さらには、地域中心核も13地区も指定しました。一方、都心を囲む環状通内側を居住促進ゾーンとして位置づけました。これら地域の魅力づけが課題ですので、多面的な事業展開により取り組んでいきたい。
2つ目は「良好な居住環境の創出」です。既存の市街地の再生、活用が重要となっていますので、主として住宅地において住みやすい空間形成を図るため、市民や企業とのパートナーシップ型まちづくりを通して、良好な道路・住宅地の形成あるいは老朽化した建物の更新に向けた支援策の検討も必要と考えています。
代表的なものとして、豊平中央地区の密集住宅市街地整備促進事業と再開発事業の同時施行を継続していきます
3つ目は「居住施策の総合的展開」です。少子高齢化の進展などから、長期総合計画では、住宅と都市計画、福祉などを含めた総合的な居住施策の推進に係わる基本計画を策定し、この考え方を踏まえて、新しい「住宅基本計画」の策定を行います。
また、市営住宅の供給については、下野幌の建て替えを含めて、既存のストックを有効活用する事業や、民間とのパートナーシップによる借上住宅を推進するなど、多面的な展開を図りたいと考えています。
4つ目は、「安全な市街地の形成」です。平成10年の「地域防災計画」見直しの中でも指摘されていますが、札幌は大きな震災は経験していませんが、積雪寒冷の地で181万人の市民が住んでいるわけですから、震災にあった時の危険性は想像を絶するものがあります。
このようなことから、都市局としても、全市的な防災の観点から市街地の状況を調査し、課題のある地域については、適切な整備の手法なども検討したいと考えています。
5つ目は、「市民や企業とのパートナーシップ」です。
これまで札幌は、行政が主体となってまちづくりを行ってきましたが、市民の参画つまり市民・企業・行政が各々の役割にもとづいてまちづくりを進めるいわゆる「パートナーシップ型まちづくりの展開」が、「新しい時代に対応した生活都市」を実現していくことになると考えています。

HOME